秋の夜長に ~『女系家族』に学ぶ、奥深き相続~
秋の夜長に読書を楽しむなら、法と家族の複雑な交差点を描いた山崎豊子さんの『女系家族』はいかがでしょうか?
大阪の老舗商家の三姉妹を中心に、複雑な相続と家族の思惑が濃密に描かれています
物語の鍵を握るのは、胎児の存在です
胎児が無事に生まれれば、亡き父の子として相続権を持つ、
この設定は、現実の相続とも見事に重なります
民法は、相続開始時点で母親の胎内にいる胎児は、「すでに生まれたものとみなす」と規定しており、相続開始時に生まれていなくても相続人とみなされます
また、胎児の認知も可能です
胎児は、父の認知により法的に父の子として認められ、無事に出生すれば相続権を得ます
小説の中では、胎児の存在が遺産分配に緊張をもたらし、家族の関係性を揺るがすきっかけとなります
これは現実の世界でも同様です
家族構成の複雑化、非嫡出子の認知、再婚家庭などが絡むことで、相続トラブルの火種となるケースも少なくありません
相続は、財産の行方を決めるだけでなく、家族の歴史と感情が交差する場であり、その在り方を映す鏡でもあります
読書の秋、物語を入り口に、相続の奥深さに踏み込んでみるのも、一興ではないでしょうか
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